委託者が死亡した場合は信託に何か影響がありますか?

委託者の地位の相続

委託者が死亡した場合、原則として、委託者の地位は相続人に承継されます。一方で、遺言信託の場合は、委託者の相続人は、委託者の地位を相続により承継しません(信託法第147条)。ただし、いずれの場合においても信託行為で別段の定めをすることが可能です。

また、信託行為で「委託者の死亡」が信託の終了事由と定められていれば信託は終了しますが、そのような規定がなければ信託は存続することになります。

  • 遺言信託以外 ➡ 委託者の相続人は委託者の地位を承継する (信託行為で別段の定めが可能)
  • 遺言信託   ➡ 委託者の相続人は委託者の地位を承継しない(信託行為で別段の定めが可能)

当初委託者が信託財産を受託者に提供して信託が開始されると、追加信託などの場合を除いて、その後は委託者が信託の運用に大きく関わる場面は少なくなり、基本的には受託者と受益者を中心に手続きが進められていきます。

信託法では、委託者の主な権限として、受託者を監視する権限や受託者の行った行為を是正する権限などが定められています。また、一定の場合には、以下のように委託者が信託財産の帰属権利者になることもあります。

信託が終了した際に、「信託の残余財産を誰に帰属させるか(帰属権利者の指定)」については、信託契約等の信託行為で定めることが一般的です。ただし、信託行為で残余財産の帰属権利者を指定していなかったり、帰属権利者として指定をされた者が全員その権利を放棄をした場合には、信託行為に委託者又はその相続人その他の一般承継人を帰属権利者として指定する旨の定めがあったものとみなされます(信託法第182条第1項、2項)。

委託者の地位の承継に関する特約

家族信託では、当初委託者と受益者は同一(自益信託)の場合が一般的ですが、その後に委託者の地位と受益者の地位を分けて別々の者に承継させることも可能です。ただし、委託者の死亡により委託者の地位を承継した相続人が信託に必ずしも協力的でない場合もあり、受益者と利害が対立することも考えられます。そこで、信託行為で「委託者の地位を承継する者を委託者の相続人以外の第三者に指定する(つまり、委託者の地位は委託者の相続人に承継されない)」旨をあらかじめ定めておくことがあります(信託法第146条)。

また、信託終了時に信託財産の権利帰属者を受益者とする場合、受益者が登録免許税法第7条の要件に該当すれば、信託財産の移転は相続とみなされて登録免許税は課税価格の0.4%で済みますが、要件を満たさない場合は課税価格の2%の登録免許税の納付が必要になります。

上記2つの問題に対する対応として、①委託者の地位は相続されないこと、②委託者の地位は受益権を有する者(受益者)に随伴して移転すること の2点を信託行為で定めておくのがよろしいのではないでしょうか。例えば「委託者の地位及び権利は、委託者の死亡により相続されず、受益権を有する者がその地位を承継する。」というような規定になるかと思います。

そうすることで、受益者が当初委託者の相続人である場合には登録免許税法第7条の要件を満たし、かつ、委託者の地位と受益者の地位が分離することなく、受益者が委託者の地位を承継しているので、委託者の他の相続人が信託に関与するのを防止することにもなります。

登録免許税法(一部省略)


第7条(信託財産の登記等の課税の特例)

1(省略)
2 信託の信託財産を受託者から受益者に移す場合であつて、かつ、当該信託の効力が生じた時から引き続き委託者のみが信託財産の元本の受益者である場合において、当該受益者が当該信託の効力が生じた時における委託者の相続人であるときは、当該信託による財産権の移転の登記又は登録を相続による財産権の移転の登記又は登録とみなして、この法律の規定を適用する。

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