家族信託

家族信託の概要

信託とは?

信託とは、自分が「信」できる人に、自分の財産を「託」して、契約等で定めた信託の目的に従って管理・運用・処分してもらう仕組みのことです。

<具体的な事例>

アパート経営(不動産賃貸)で生計を立てている高齢の父が、今後はアパート経営を長男に任せたいと思い、長男と賃貸不動産の管理・運用・処分に関する信託契約を締結し、「賃貸アパート」とその管理に必要な「現金」を長男に渡した。

(信託の目的)

  • 父は自分が生きている間は賃料収入から生活費を支給してもらいたい。
  • 自分が死亡した後は、自分の妻に生活費として賃料収入を支給してもらいたい。
  • 妻が亡くなった後は、長男に賃貸アパートを相続してもらいたい。

(信託の全体像)

  • 信託財産:賃貸アパート・金銭
  • 信託の目的:賃貸不動産の管理・運用・処分、父及び母の生活の維持、父から長男への財産の承継
  • 委託者:信託財産を長男に託す父
  • 受託者:信託財産を父から託された長男
  • 受益者:信託財産から生じる利益を受け取る父・母
  • 信託の終了事由:母の死亡

◆この場合、委託者である父が、信託契約により、受託者である長男に、賃貸アパート及び金銭(信託財産)を託し、受託者である長男は、受益者である父・母のために、信託の目的に従って信託財産を管理・運用・処分することになります。

◆上記事例では、委託者兼受益者である父が死亡した場合、信託契約でその後の受益者として母を指定しています。これにより信託は母の死亡時まで終了せず、受託者である長男は、以後は受益者である母のために信託財産の管理・運用・処分を行います。
委託者の死亡により受益権を承継する者を「遺言」で指定するのではなく、遺言の代わりに「契約」で指定するというもので「遺言代用信託」とも言われます。

家族信託の関係当事者

信託の中心的な当事者は、委託者、受託者、受益者です。信託は基本的にこの3者で構成されます。

  • 委託者 ⇨ 自分が所有する財産を信託行為により託す人
  • 受託者 ⇨ 託された財産を信託の目的に従って管理・運用・処分する人
  • 受益者 ⇨ 託された信託財産から生じた利益を受け取る人

受益者には、受託者がきちんと信託契約で定めた信託の目的に従って行動しているかを監督する権限があります。
また、受益者とは別に、自己の名をもって受託者を監督する権限を有する者(信託監督人)や特定の受益者を代理してその受益者のために権利行使を行う者(受益者代理人)を信託行為で定めることもできます。信託監督人や受益者代理人には受託者を監督する役割がありますので、受託者がこれらを兼任することはできません。

信託監督人すべての受益者のために受託者を監督する。
・信託行為で信託管理人の選任規定を定めるほか、利害関係人の申立てにより裁判所が選任する。
受益者代理人代理する特定の受益者に代わって、当該受益者の権利を行使する。
受益者代理人に代理してもらう受益者は、原則として自ら権利行使ができなくなります)
・信託行為で受益者代理人の選任規定を定める。

自益信託と他益信託

自益信託(委託者=受益者)

財産を信託する委託者と信託財産から生じた利益を受け取る受益者同じ場合です。
家族信託の設定は自益信託が一般的です。

信託財産は外形上は受託者に移転していますが、受託者は受益者のために信託財産の管理等を行っているだけで、信託財産から生じる利益は受益者が受け取ります。
概念的には信託財産は委託者、受託者、受益者の誰の所有にも属さない独立した財産という考え方もあるようですが、税務の考え方は、信託財産の実質的な所有者は信託財産から経済的利益を受ける受益者とされています。そのため受益者が信託財産から利益を受け取ったとしても、当初委託者と受益者は同一ですので、信託設定により委託者から受益者へ財産権(所有権)の移転があったとはみなされません。
従いまして、自益信託の場合は贈与税は課税されません。

他益信託(委託者≠受益者)

信託財産を提供する委託者と信託財産からの利益を受け取る受益者異なる場合です。
この場合は、信託設定時に委託者から受益者への財産権(所有権)の移転があったとみなされ、原則として贈与税の課税対象となります。

<参考><一般贈与財産用>(一般税率)の税率表

参考までに贈与税の税率表を掲載しておきます。

(贈与税の計算方法)
贈与する財産の価格 - 基礎控除額(110万円) = 基礎控除後の課税価格
基礎控除後の課税価格 × 税率 - 控除額 = 贈与税額

※税については頻繁に改正が行われますので必ず最新の情報を確認するようにしてください。また、税には細かい規定や特例が多々あります。解釈を間違えて手続してしまったので、手続をなかったことにしてやり直したいと思っても、基本的に税務に関してそれは通用しませんので、事前に税理士など税の専門家に必ずご確認ください。

基礎控除後の課税価格200万円
以下
300万円
以下
400万円
以下
600万円
以下
1,000万円
以下
1,500万円
以下
3,000万円
以下
3,000万円
税 率10%15%20%30%40%45%50%55%
控除額10万円25万円65万円125万円175万円250万円400万円

商事信託と民事信託

信託には、信託銀行等が営利目的で行う「商事信託」と受託者が営利を目的としないで行う「民事信託」があります。民事信託のうち、家族を信託の受託者として設計された信託のことを一般的に「家族信託」といいます。

商事信託は、顧客から託された財産を営利目的でプロが管理・運用しますので信託報酬が発生します。信託する金銭の最低預入金額を数百万円から数千万円に設定している商品もありますので、誰でも気軽に利用できるわけではありません。また、金融庁の監督下で営業していますので、あらかじめ決められた商品しか取り扱えず、信託銀行等が自社の裁量で自由に金融商品の内容を変更したりすることはできません。

一方で、家族信託では受託者の報酬は無償の場合が多いと思いますが、報酬を支払うかはどうかは委託者と受託者の間での信託契約で自由に定めることができます。委託者と受託者の当事者間で合意ができれば柔軟な対応が可能です。

家族信託では、財産管理を委託された受託者(家族)は通常は資産管理のプロではないので、きちんと財産管理ができるかは未知数です。また、受託者を監督するのは信託財産からの運用益を受け取る受益者になりますが、受益者も通常は資産管理のプロではありません。

そこで、信託契約等で受託者を監督する信託監督人や受益者代理人の選任に関する規定を定めて、専門家(弁護士・司法書士・税理士等)に信託管理人の就任を依頼することも対応策の一つになります。

商事信託民事信託
目的営利目的非営利目的
報酬発生する信託契約で発生させることができる
契約内容の柔軟性なしあり
受託者の監督者金融庁受益者
(信託契約で信託監督人や受益者代理人を定めることができる)
信託財産の管理・運用を行う者専門家(信託銀行等)非専門家(家族)

信託行為

信託の設定には次の3つの方法があり、これら3つの設定方法を信託行為といいます。(信託法第2条、第3条)

  • 信託契約を締結する方法(契約信託)
  • 遺言をする方法(遺言信託)
  • 信託宣言による方法(自己信託)

契約信託

委託者と受託者が信託契約を締結することによって成立する信託です。家族信託の実務で最も一般的な方法が、この契約信託(契約による信託)になります。

委託者が「生前の財産管理や生活費等の確保」「死後の遺産承継の方法」を希望して信託を設定するのであれば、契約信託の選択が向いているかもしれません。
委託者の生前に信託財産が受託者に移転して、受託者の下で有効に利活用されるため、生前に生活費等の給付も受けられますし、自分の死後の財産の承継方法についても契約で柔軟に決めることができます。

遺言信託

委託者が遺言書に実現したい信託内容を記すことで成立する信託です。遺言の効力は遺言者の死亡により生じますので、委託者の死亡により信託の内容が実現されることになります。

委託者が「生前の財産管理までは必要ないけれど、自分の死後の遺産の承継方法についてだけは自分の希望どおりにしてほしい。でも通常の遺言では多様な承継方法は指定できないので遺言で信託を設定したい」と考えている場合には、遺言信託を選択する方法があるかと思います。
契約信託の場合は、通常は委託者の生前に信託が開始され、それに伴い受託者には一定の責任と負担が発生します。自分の死後に効力が発生する遺言を利用することで、自分が生きている間は受託者にできるだけ負担をかけたくないと考える委託者の気持ちは理解できます。

ただし、遺言で受託者に指定された者が信託を引き受けることは義務ではありませんので、受託者が存在しない事態になり得ることも考えなければなりません。受託者が不在の場合には、利害関係人の請求により、裁判所が受託者を選任することができます(信託法第5条、第6条)。
遺言信託にはこのようなリスクがあることを理解した上で、受託者の指定候補者に遺言内容を事前に伝えてあらかじめお願いしておくなどの対策が必要になります。
別の方法としては、遺言ではなく契約信託において、信託の効力発生を始期付き(例えば、自分が死亡したとき)とするなど工夫をすることで、この問題に対処することは可能です。

また、信託の効力発生が委託者の死亡後になるため、委託者が遺言書を作成した後に認知症になってしまった場合、委託者の財産が凍結されてしまう恐れがあります。家族信託を利用する典型的な理由の1つは認知症対策ですが、遺言信託が生前の認知症対策にならない点は信託を設定する上での大きなデメリットになります。

なお、信託銀行等が提供する商品に遺言信託がありますが、これは遺言書の作成・保管から相続発生時の遺言執行までをトータルでサポートする商品の総称ですので、信託法で規定されている信託行為の遺言信託とは異なります。

自己信託

委託者が所有する一定の財産を、自己の固有財産と切り離して信託財産として設定することで成立する信託です。この場合は、委託者が自ら受託者となり、第三者(受益者)のために信託財産を管理・運用・処分することになります。自分が自分に財産を託すことにより自己完結型で信託を発動できるため「信託宣言」ともいわれます。

自己信託は「委託者=受託者」であるため、委託者の固有財産が信託財産として組成されたことが外形上分かりにくいという側面があります。そこで信託が真正に成立したことを担保するため、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

①公正証書又は公証人の認証を受けた書面若しくは電磁的記録により信託内容を作成する。
②受益者になるべき者として指定された第三者に対して、確定日付のある書面により信託内容を通知する。

なお、自己信託は、信託の設定時に委託者から受益者への財産移転が生じているため、みなし贈与として贈与税の課税対象になることにも注意が必要です。

自己信託については、例えば「障害のある子どものために親が自分の財産を自己信託し、親が生きている間は親が財産を管理し、親の死後は信頼できる人へ信託財産の管理を引き継いでもらう」というような活用方法があります。

信託契約書の締結の場面で時々問題となるのは、受託者に財産を管理してもらうことについては問題ないものの、たとえ家族であっても自分の所有する財産の名義を受託者へ移転することについては難色を示す方がいらっしゃいます。このような場合には、無理に信託契約書を締結して委託者から受託者へ名義を移転するよりも、委託者が自分で管理できるうちは自己信託で信託を設定してもらい、将来的には家族に信託財産の管理を引き継いでもらうということを検討してもいいかもしれません。いずれにしても他益信託による贈与税の問題とのバランスを考慮する必要があります。

信託財産

信託できる財産

家族信託で信託できる財産は、金銭的な価値があり、第三者に譲渡ができて管理が可能な財産です。実務では、「現金」「不動産」「自社の株式」の3つが信託財産としてよく利用されます。

① 現金

委託者名義の預金口座(通帳やキャッシュカード)を受託者に渡すのではなく、口座内の預金を受託者名義の信託口口座に移動(振込み)することにより信託します。

上記のように預金を信託する際には、受託者は事前に信託口口座を開設することになりますが、その際に金融機関からは公正証書による信託契約書の提出を求められるケースが多いです。

金融機関により条件が異なりますので、信託契約書を公正証書で作成する必要があるかなど、信託口口座の開設の条件を金融機関に事前に確認しておく必要があります。
ただし、信託口口座の開設を取り扱っていない金融機関も多数あるため、その場合は、受託者が信託専用の別口座(通常の受託者名義の口座で信託専用として管理するもの)を開設して、信託財産と自己の固有財産が混在しないように分けて管理することになります。

※信託口口座を開設して信託財産を受託者の固有財産と分離しておくことで、仮に受託者が破産したような場合でも、債権者による債権回収の対象が信託財産に及ぶのを防ぐことができます。

② 不動産

不動産を信託する場合は、信託目録を添付した上で「所有権移転及び信託」の登記を法務局に申請します。信託目録は、「委託者に関する事項」「受託者に関する事項」「受益者に関する事項」「信託条項」の4つのカテゴリーで構成されています。

そのうち信託条項については、「①信託の目的」「②信託財産の管理方法」「③信託の終了事由」「④その他信託条項」の4項目が登記事項になります。
信託条項は、信託契約の内容を反映して作成する必要がありますが、信託契約の中身をすべて記載する必要はなく、公示した方がいいと思われる部分を抜粋して登記することになります。どこまでの内容を公示するかについては特に決まりがあるわけではなく、登記の申請を代理する司法書士の考え方次第というところがありますが、家族間のプライベートな取り決めなどは公示する必要性がなければ記載しない方がいいでしょう。

弊事務所では、司法書士が信託条項(案)を作成して事前に当事者に見てもらい、問題がないことを確認してから登記を申請するようにしています。

③ 自社の株式

オーナー社長(自社株の大量保有者 兼 経営者)が認知症になった場合、会社の経営判断に大きな支障をきたすことになります。そのような状況を回避するため、社長が保有している自社の株式を会社の後継者となる家族に信託財産として信託するケースがあります。

信託できない財産

第三者に譲渡できない財産信託財産とすることができません。また、譲渡を行うに際して条件などが付いている場合は取り扱いに注意が必要です。

信託の設定には委託者から受託者への財産の移転が必要になります。もし仮に受託者が信託行為で定めた財産を受け取ることができなければ、適切に信託財産の管理・運用・処分をすることができないからです。

① 一身専属権

本人にのみ帰属している権利で、第三者が本人に代わって権利行使することができない権利のことです。具体的には、年金受給権や生活保護受給権などが該当します。

② 農地

農地については農地法の関係で、農業委員会の許可を得ずに所有権の移転に関する契約(信託契約など)を締結してもその契約は無効となります(農地法第3条第1項、第6項)。

信託の効果

信託が設定されたことによる効果のうち、特に重要な次の4つの効果について確認します。

  • 信託財産の帰属に関する効果
  • 信託財産の管理処分に関する権限の効果
  • 受託者が信託の目的を逸脱した行為(権限外行為)を行った場合の効果
  • 委託者の死亡が信託に及ぼす効果

信託財産の帰属に関する効果

信託が設定されると、信託財産の所有権等の権利は委託者から受託者に移転しますが、受託者の固有財産になるわけではありません。信託財産は受託者個人の財産と区別して管理されます。受託者個人の財産と区別するために、不動産については「所有権移転及び信託」の登記手続を行い、現金等は基本的には受託者名義の信託口口座で管理されます。

一方、委託者から受託者に信託された信託財産は、委託者の固有財産でもなくなります。従って、委託者が死亡した場合でも、信託財産は委託者の相続財産には含まれません。信託行為に定めることにより、委託者(兼受益者)が死亡しても、後継の受益者のために信託を継続させる設計が可能であるのもこの効果によるものです。

信託が終了した後の信託財産の帰属については、信託行為において決められた帰属先に移転することになります。

信託財産の管理処分に関する権限の効果

委託者の財産が信託財産として設定され、委託者から受託者へ財産が移転されると、以後は信託財産の管理・処分は受託者しか行使できなくなります。

受託者が信託の目的を逸脱した行為(権限外の行為)を行った場合の効果

受託者は、信託の目的に従い、信託行為で定められた権限の範囲内で信託財産の管理を行う義務がありますが、その義務に違反して権限を逸脱した行為(権限外行為)を行った場合でも、原則としてその効果は信託財産に及びます。

その上で、以下の条件に該当する場合に限り、受益者はその行為を取り消すことができます。(信託法第27条)

受託者が信託財産に対して行った権限外行為については、次のいずれにも該当するときに限り、受益者は取消権を行使することができます。

  • 権限外行為の相手方が、その当時、その行為の対象物が信託財産であることを知っていたこと。
  • 権限外行為の相手方が、その当時、その行為が受託者の権限外行為であることを知っていたこと又は知らなかったことにつき重大な過失があったこと。

信託の登記・登録をすることができる信託財産に対して抵当権を設定したり、あるいは第三者に所有権を移転したりした行為が受託者の権限外行為だった場合、次のいずれにも該当するときに限り、受益者は取消権を行使することができます。(※この場合は信託財産であることが公示されていますので、取引の相手方の信託財産に関する知・不知の事情は考慮されません)

  • 権限外行為の当時、その行為の対象となる信託財産に信託の登記又は登録がされていたこと。
  • 権限外行為の相手方が、その当時、その行為が受託者の権限外行為であることを知っていたこと又は知らなかったことにつき重大な過失があったこと。

一方で、取消権をいつまでも行使しないで放置しておくことは、信託財産に対する取引の安全性を妨げることになりますので、以下のいずれかに該当する場合には、取消権時効によって消滅します。

  • 受益者(信託管理人がいる場合は信託管理人)が取消しの原因があることを知った時から3か月間取消権を行使しないとき
  • 受託者が権限外行為を行った時から1年を経過したとき

委託者の死亡が信託に及ぼす効果

委託者が死亡した場合でも、「委託者の死亡」が信託の終了事由として信託行為で定められていない限り、基本的に信託は存続し、受託者は、受益者(受益権を承継した者)のために信託財産を引き続き管理・運用・処分することになります。

信託の終了事由

信託の終了事由は、信託法(163条・164条)で規定されていますが、実務においては、以下の例ように信託行為(信託契約)で定めることが一般的です。信託の終了事由は契約で柔軟に定めることができます。

(信託契約で「信託の終了事由」を定める場合の例)

第×条(信託の終了) 
 本件信託は、次の事由によって終了するものとする。
 1.受益者が死亡したとき
 2.本件信託財産が消滅したとき
 3.受託者及び受益者が合意をしたとき
 4.信託法第163条に定める終了事由が発生したとき

信託法

(信託の終了事由)
第163条 信託は、次条の規定によるほか、次に掲げる場合に終了する。

  1. 信託の目的を達成したとき、又は信託の目的を達成することができなくなったとき。
  2. 受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が一年間継続したとき。
  3. 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が一年間継続したとき。
  4. 受託者が委託者又は受益者から費用の償還等を受けられないため信託を終了させたとき。
  5. 信託の併合がされたとき。
  6. 信託の終了を命ずる裁判があったとき。
  7. 信託財産についての破産手続開始の決定があったとき。
  8. 委託者が破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定を受けた場合において、破産法、民事再生法、会社更生法の規定による信託契約の解除がされたとき。
  9. 信託行為において定めた事由が生じたとき。

(委託者及び受益者の合意等による信託の終了)
第164条 委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。
2 委託者及び受益者が受託者に不利な時期に信託を終了したときは、委託者及び受益者は、受託者の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
3 前二項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
4 委託者が現に存しない場合には、第一項及び第二項の規定は、適用しない。

家族信託のメリット・デメリット

家族信託のメリット

家族が抱えている問題や将来に対する不安などは各家庭によって異なりますので、それらの事情を考慮したうえで家族信託のスキームを設計することが重要になります。信託契約書のひな形などは書籍やインターネットで比較的容易に手に入るかもしれませんが、そのようなマニュアル的なもので信託の設計を行っても、時間と費用が無駄になってしまう可能性が大きいです。

個々の事案により信託の利用目的が異なる以上、家族信託のメリットも事案によって異なるのですが、一般的に次のようなことがメリットとしてよく取り上げられます。

  • 認知症などにより親の資産が凍結されるのを回避することができる(資産凍結を回避)
  • 信託行為により柔軟な財産管理を実現することができる(自由な財産管理の実現)
  • 遺言では実現できない数世代先までの資産承継が可能になる(遺言に代わる資産承継)
  • 相続人が不動産を共有することに対するリスク対策になる(不動産の共有状態の解消)
  • 倒産隔離機能により信託財産の独立性を確保できる(倒産隔離機能による信託財産の保全)

※家族信託のメリットについては、こちらで詳しくご説明します。

家族信託のデメリット

成年後見制度や遺言では実現できない制度上の問題点に対して、家族信託では信託行為(信託契約)で柔軟な設計が可能になるということが信託利用の契機となる最も大きな部分だと思います。

一方で、家族信託を利用すればすべての問題が解決できるわけではなく、デメリットも当然に存在します。あらゆる問題に完璧に対応できる制度というものは存在しません。各制度のメリット・デメリットを理解して、それぞれの長所を活かし短所を補えるように、各制度を必要に応じて併用することも視野に入れる必要があります。

一般的に次のようなことが家族信託のデメリットとしてよく取り上げられます。

  • 家族のなかに受託者としての適任者がいない(受託者の不存在)
  • 家族間の不満や不信感からトラブルに発展する可能性がある(家族間の合意形成の失敗)
  • 受託者の責務は財産管理を行うことであって受託者に身上監護権はない(身上監護権の欠如)
  • 信託を設定しても節税対策にはならない(税務面での問題)
  • 家族信託の設計に初期費用と時間がかかる(コストと時間の問題)

※家族信託のデメリットについては、こちらで詳しくご説明します。

家族信託の手続の流れ

まず最初に、家族信託を行う上で一番大切なことは、家族間での話し合い(家族会議)を時間をかけてしっかりと行い、家族全員が共通の認識を持つことです。

この家族会議を通じて家族間のわだかまりや疑念を払拭し、家族の助け合いの精神を醸成することが家族信託を成功させる最も重要なプロセスになります。

また、家族会議には家族信託に精通している専門家にも加わってもらうことが望ましいです。
世の中に全く同じ事情を抱えた家族が存在しないのと同じように、家族信託のプラン作成もオーダーメイドによる作り込みが必要になります。
何度も話し合いを重ね、時には意見をぶつけ合い、何が家族にとって一番いい方法なのかを専門家のアドバイスを得ながら探していく、まずはそのような時間がどうしても必要になります。

<家族信託の手続の流れ>

  • step1
    家族会議の開催

    家族会議を開き、委託者が財産を受託者に託す際の思いや希望、信託財産としての適格性の確認、受託者の責任や役割についての理解とその負担に対するケアの方針、受益者が信託財産からの受け取りを期待している利益の内容、信託の当事者(委託者、受託者、受益者)以外の家族の気持ちや役割などを確認する。

  • step2
    信託契約書(案)の作成

    家族の思いや希望を確認した上で、専門家に信託契約書(案)を作成してもらう。

  • step3
    公証人の事前確認

    信託契約書(案)を家族の各メンバーが確認し、修正を希望する箇所があれば専門家に修正してもらったうえで、家族の思いが反映された信託契約書を公証人に事前に確認してもらう

  • step4
    信託口口座の開設準備

    信託財産を適切に管理するために受託者名義の信託口口座を作成する必要があるので、信託口口座の開設に向けて、信託契約書の内容について問題がないか金融機関に事前の確認を行う。

  • step5
    公正証書で信託契約書を作成

    信託契約書について公証人や金融機関の事前確認が終えた後は、公証役場に赴いて、公正証書で信託契約書を作成する。

  • step6
    信託口口座の開設

    受託者が金融機関で受託者名義の信託口口座を開設する。

  • step7
    委託者の財産を受託者に移転

    委託者が受託者に財産を移転し、受託者は信託の目的に沿って受益者のために信託財産を適切に管理・運用・処分する。

家族信託の個別記事一覧

  1. 家族信託の具体的なメリットは何ですか?
  2. 家族信託の具体的なデメリットは何ですか?
  3. 賃貸不動産を信託財産とする場合に注意することはありますか?