信託財産が賃貸不動産だった場合、税務面で問題となるのは、「損益通算の禁止」です。
例えば、賃貸不動産を信託していない場合には、その賃貸不動産から生じる所得は不動産所得に該当し、損失が生じた場合には他の所得と相殺できます。つまり損益通算が可能です。
一方で賃貸不動産を信託した場合、例えば大規模修繕などによりその賃貸不動産のある年の収益がマイナスだったとしても、その損失はなかったものと考えます。
以下、損益通算の具体的な事例を確認していきます。
<損益通算の例>
- 受益者の給与所得 600万円
- 不動産所得(信託財産) -100万円
この場合の所得の総額は600万円
- 受益者の給与所得 600万円
- 不動産所得
賃貸不動産①(信託財産) -100万円
賃貸不動産②(自己所有) 300万円
この場合の所得の総額は900万円
- 受益者の給与所得 600万円
- 不動産所得
賃貸不動産①(信託財産) 300万円
賃貸不動産②(自己所有) -200万円
この場合の所得の総額は700万円
- 受益者の給与所得 600万円
- 不動産所得
賃貸不動産①(信託A財産) 300万円
賃貸不動産②(信託A財産) -100万円
この場合の所得の総額は800万円
- 受益者の給与所得 600万円
- 不動産所得
賃貸不動産①(信託A財産) 100万円
賃貸不動産②(信託A財産) -300万円
この場合の所得の総額は600万円
- 受益者の給与所得 600万円
- 不動産所得
賃貸不動産①(信託A財産) 300万円
賃貸不動産②(信託B財産) -300万円
この場合の所得の総額は900万円
このように、同じ信託契約内で生じた損益の相殺を除き、賃貸不動産を信託した場合には、その信託財産から損失が生じても、その損失はなかったものとされて他の所得との損益通算ができません。
ですので、賃貸不動産を信託財産とする場合は、税金のことも考慮に入れつつ信託財産への組み入れの是非を検討をする必要があります。
尚、家族信託では、信託財産から生じた利益は受益者に帰属しますので、信託財産に関する確定申告は受益者が行い、受益者が所得税の納税義務を負うことになります(受益者課税の原則)。
税務の取扱いは頻繁に変更されますので、上記事例はあくまでも参考程度に留めていただいて、詳細については事前に税の専門家である税理士等に必ず確認してください。
(タックスアンサー) No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算
不動産所得を生ずべき事業を行う民法組合等の特定組合員(個人組合員のうち、組合事業に係る重要な業務の執行の決定に関与し、かつ、契約を締結するための交渉等を自ら執行する組合員以外のもの)または信託の受益者である個人が、組合事業または信託から生じた不動産所得の損失については、生じなかったものとみなされ、他の不動産所得の黒字から差し引くことができませんし、損益通算の対象にもなりません。
(注1)民法組合等とは、民法第667条に規定する組合契約や投資事業有限責任組合契約に関する法律第3条に規定する投資事業有限責任組合契約(外国におけるこれらに類する契約を含みます。)に基づく組合等をいいます。
(注2)組合事業または信託から生じる不動産所得がある人は、組合事業ごとまたは信託ごとに収支に係る一定の明細書を確定申告書に添付しなければなりません。
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