公正証書遺言を作成するにあたり、公正証書のデジタル化に伴って手続はどのように変わりますか?

公正証書のデジタル化の概要

令和5年に、「民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」が制定され、民事関係の諸手続についてデジタル化が推進されることとなり、それに伴い、令和7年10月1日に改正「公証人法」(以下、「新公証人法」といいます。)が施行されました。

新公証人法の施行により、東京都内の公証役場から順次公正証書のデジタル化が開始され、令和7年12月15日に全国の公証役場で電子公正証書が作成されることとなりました。

公正証書のデジタル化により、これまで公証人によって紙で作成されていた公正証書原本が、原則として電磁的記録(データ)で作成されるようになりました。

例外として、「電磁的記録をもって公正証書を作成することにつき困難な事情がある場合」(新公証人法第36条2号)に限り、従来どおり公正証書原本が書面(紙)で作成され保管されます。具体的には、「事業に係る債務についての保証契約に関する公正証書(民法第465条の6)」「秘密証書遺言(民法第970条第1項)」「成年被後見人の遺言公正証書(民法第973条)」など、押印することが法定されている場合が該当します。

また、これまでは嘱託人(公正証書作成の依頼者等)と公証人が、書面で作成された公正証書原本署名・押印するという行為が必要であったため、公証人と嘱託人が対面で手続を行う必要がありましたが、公正証書のデジタル化に伴い、デジタル署名での手続が可能になりましたので、一定の要件を満たす場合にはウェブ会議(リモート方式)による公正証書の作成も可能になりました。

「対面」による電子公正証書の作成

対面方式の場合は、公正証書のデジタル化に伴う変更点は、主に次の2点になります。

  1. これまで書面で作成された公正証書原本への署名・押印が、デジタル公正証書への電子サインになった。
  2. 公正証書の正本・謄本が、書面での発行のほか、電磁的記録(データ)でも発行されるようになった。

対面方式による手続の場合、嘱託人(公正証書作成の依頼者等)の手続は、上記のとおり従来と比較してもそれほど大きな変更点はありません。

電子サインとは、公証人のPC(パソコン)のモニターやPCに接続されたタブレット端末などに電子ペン(タッチペン)で署名をしてもらい、その筆跡がそのまま公正証書原本の署名欄に画像として表示され記録されるものです。

デジタル化による公正証書の作成手続の流れと変更点

デジタル化前の手続デジタル化後の手続
①嘱託(申請)
・公証役場に出頭して手続
・印鑑証明書等の書面による本人確認
嘱託人は公証役場への出頭が不要になり、インターネットからメールを送信して嘱託することが可能になった。
(嘱託人の具体的な手続)
マイナンバーカード等で電子データに電子署名を行い、署名済みの電子データに電子証明書を付けて公証役場へインターネットで送信する。
(公証人の具体的な手続)
電子証明書により電子署名の有効性を確認して、対面での手続をせずに本人確認を完了させる。
②嘱託人の陳述、内容確認等
公証人が対面で、嘱託人の陳述聴取、真意確認、内容の正確性の確認等を行う
嘱託人からの申出を公証人が相当と認めた場合には、ウェブ会議での手続が可能になった。
(嘱託人の具体的な手続)
ウェブ画面上で内容等を確認する。
(公証人の具体的な手続)
嘱託人等の本人確認、通話場所が適切かなどをウェブ会議でチェックする。(注1)
③公正証書(原本)の作成・保存
・公正証書原本を書面で作成・保存
・嘱託人及び公証人の署名・押印が必要
公正証書(原本)は原則として電子データで作成し、嘱託人等はリモートでの電子サインで手続が完了する。
(嘱託人の具体的な手続)
公正証書の内容を確認して、嘱託人が複数人いる場合は順々に電子サインで承認する(押印不要)。
(嘱託人の具体的な手続)
公証人が官職証明書を用いて電子署名をして公正証書を完成させる。
④正本・謄抄本の交付
公正証書の正本・謄抄本を書面で交付
電子データで作成された公正証書は、でも電子データでも閲覧・受取りが可能になった。
【閲覧の方法】
①電子データを画面に表示
②電子データを書面に出力
【交付・提供の方法】
①電子データの出力書面を交付
②インターネットからメールを送信して提供(クラウド経由でダウンロード)
③USBメモリ等にデータを記録して提供

(注1)遺言公正証書の作成において、嘱託人が他人からの圧力を受けることなく本人の自由な意思の下で真意を述べることができる環境を確保するため、例えば、ウェブ会議の開始時や途中の任意の時点において、嘱託人にウェブ会議用のカメラを操作させて周囲の全方位を撮影させることにより、周囲に誰もいないことを確認するなどの方法が予定されています。