相続土地国庫帰属制度(所有者不明土地の解消-No.2)

所有者不明土地の解消に向けて相続土地国庫帰属制度が創設されました。

相続土地国庫帰属制度の創設(令和5年4月27日施行)

相続土地国庫帰属制度とは、相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限ります)により土地の所有権を取得した相続人が、相続した土地を手放して国庫に帰属してもらうよう申請することができる制度です。

法務省のホームページで直近の統計が公表されています。
それによりますと、令和8年2月28日現在の利用状況は以下のとおりです。却下、不承認、取下げの理由も公表されていますので、ご興味のある方は「相続土地国庫帰属制度の統計」で確認してみてください。

◆申請件数 :総数5,140件 (地目別内訳)田畑2,000件 宅地1,788件 山林792件 その他560件
◆帰属件数 :総数2,542件 (地目別内訳)宅地931件 農用地822件 森林167件 その他622件
◆却下件数 :79件
◆不承認件数:80件
◆取下げ件数:940件

相続土地国庫帰属制度の手続きの流れ

引用:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要

相続土地国庫帰属制度を申請できる者

この制度を利用できるのは、相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限る)によって土地を取得した方です。
相続または遺贈以外の原因(例えば、売買など)で土地を取得した方は、自らの意思でその土地を取得されているため、原則として、この制度を利用することができません。相続とは関係がない法人についても対象外になります。

土地を複数人で共有している場合は、相続または遺贈により土地の持分を取得した者が、ほかのすべての共有者と共同で申請するのであればこの制度を利用することが可能です。この場合には、ほかの共有者の土地持分の取得原因については相続や遺贈でなくても構いません

相続土地国庫帰属制度の対象とならない土地

どんな土地でも国が引き取ってくれるわけではなく、国庫に帰属した土地については、国が管理または処分を行いますので、高額な管理費用がかかるような土地や、処分するのに支障があるような土地については、国庫帰属が認められません。却下・不承認となったときでも、申請手数料(土地一筆当たり14,000円)は返還されませんのでご注意ください。

申請自体が却下されて受け付けされないケース

建物がある土地

建物は、土地のように汎用的な利用価値も少なく、老朽化に伴い倒壊などの危険性もあるので、適切な状態に保つためには過分の管理費がかかります。そのため、建物は国庫に帰属させることができず、建物を除去しない限り当該土地の申請は受け付けされません。

ただし、物置小屋などは建物認定されず地上に存する工作物とみなされることがあります。この場合は、管理に過分の費用又は労力を要するかどうかによって承認の可否が判断されますので、申請が即時に却下されることはありません。地上の工作物等については、次の項目「申請は受け付けられても審査により不承認となるケース」土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地をご参照ください。

担保権や使用収益権が設定されている土地

抵当権などの担保権が設定されている土地は、債務者の支払いが滞ると、債権者に担保権を実行されて所有権を失ってしまう危険性があります。また、所有権には物を使用・収益・処分できる権限がありますが、土地に地上権や賃借権などの使用収益権が設定されていると、国が所有者として土地を管理する上で、それらの権利者との間で問題が生じる可能性があります。そのため、担保権や使用収益権が設定されている土地の申請は却下されます。

山林などで上空の送電線を支持するために鉄塔が建てられ、電力会社が送電線の安全確保や点検・修理のために送電線下の土地に対して地役権を設定する場合があります。この地役権が設定された土地のことを承役地といいますが、承役地も使用収益権の負担付き土地に該当しますので、この制度を利用することはできません。一方で、要役地(承役地から便益を提供してもらう側の土地)は、負担付きの土地ではないので申請することが可能です。

他人の利用が予定されている土地

現に土地の所有者以外の者によって使用されており、今後もその使用が予定されている土地については、国と使用者等との間で調整が必要になるため、承認申請は受け付けられません。例えば、①現に道路として利用されている土地、 ②墓地内の土地、③境内地、④水道用地、用悪水路、ため池として現在利用されている土地 などが該当するとされています。

以前は道路や水路等として利用されていた土地であっても、現在は道路や水路として使用されていない場合は、申請が可能です。

土壌汚染されている土地

特定有害物質により土壌が汚染されている土地は、汚染の除去に多大な費用がかかり、また有害物質の影響で周囲に害悪を発生させるおそれがあるため申請は却下されます。

特定有害物質とは、土壌汚染対策法に基づき、人の健康に被害を及ぼすおそれがあるとして指定された物質のことで、第1種特定有害物質(揮発性有機化合物)、第2種特定有害物質(重金属等)、第3種特定有害物質(農薬等)に分類されます。

境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地 

隣接する土地の所有者との間で土地の境界に争いがある土地や、他人がその土地の所有権を主張している場合など、土地の所有権の範囲(境界)や所有権の帰属について争いがある場合には申請は却下されます。

所有権の範囲(境界)について争いがない土地とは、以下の条件を満たした土地になります。

  1. 申請者が認識している隣接土地との境界が現地で目視により確認できること

    <既設境界標、境界とみなされる地物・地形又は工作物等が現地に存在する場合>
    それらを申請者が提出する図面に表示します。

    <既設境界標、境界とみなされる地物・地形又は工作物等が現地に存在しない場合>
    申請者が境界点を表示する目印を現地に設置し、申請者が提出する図面にそれを表示します。

  2. 申請者が認識している申請土地の境界が、隣地所有者の認識と相違なく争いがないこと

    法務局から隣接土地の所有者に対して、境界争いの有無等に関する確認の連絡がいきます。

土地の境界を確定するための測量や境界確認書の作成までする必要はありませんが、通常、審査に8か月ほどかかるとされており、境界確認書の写しを提出することで審査が円滑に進んで審査期間が短縮される可能性があります。すでに境界確認書がお手元にある方は、申請の際に境界確認書の写しを提出された方がいいと思います。

 申請は受け付けられても審査により不承認となるケース

内容につきましては、こちらも併せてご確認ください。

一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地

「勾配が30度以上で高さが5メートル以上の崖がある土地」で、「通常の管理に過分な費用や労力を要する場合」には、不承認とされることがあります。

通常の管理に過分な費用や労力を要する場合とは、例えば、隣地に土砂が流れ込むことによって被害を及ぼす可能性があるため擁壁工事等を実施する必要があると判断されるようなケースが該当します。

従いまして、このような崖地がある土地ということで即座に却下されるというわけではなく、その管理に要する費用や労力などと併せて審査されます。

土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地

次の2つの要件のいずれにも該当する土地については、承認されません。

  1. 工作物、車両又は樹木その他の有体物が存すること
  2. その有体物が土地の通常の管理又は処分を阻害すること

<承認されないことが想定される有体物の例>

◆ 建物には該当しない廃屋、物置小屋などの工作物

◆ 放置車両

◆ 果樹園の樹木、民家・公道・線路等の付近に存在する樹木、竹木など

  • 果樹園については国が農業を営むわけではないので、土地を管理・処分する際にこれらの樹木を伐採する必要があるため
  • 民家・公道・線路等の付近に存在する樹木については、その樹木が枯れていれば倒木のおそれがあり、また、枝の落下防止のための剪定や落葉の清掃などで定期的なメンテナンスが必要になるため
  • 竹木については、周辺の土地に竹木の根が侵入して近隣の土地の利用に支障を生じさせるおそれがあり、定期的な伐採が必要となるため

土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地

地下に存在する有体物のため、それを除去しない限り通常の管理又は処分をすることができない土地については不承認となります。ただし、土地の通常の管理又は処分をするのに支障がない有体物(例えば、広大な土地の片隅に存する小規模な配管など)であれば、除去しなくても特に問題はないとされています。

建物を解体して更地にする際に出る廃材(屋根瓦やコンクリート破片など)について、かつては悪質な解体業者が、それらの処分に費用がかかるため建物が建っていた土地の地中に埋めていたということがありましたが、そういった土地も同じ理由で不承認になりますので注意が必要です。

隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地

他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)の所有者が、公道に至るために、その土地を囲んでいる他の土地(囲繞地)を通行できる権利について、民法で以下のように定めています。
このような場合において、他の土地を通行できる権利(囲繞地通行権)が妨害されている土地は不承認となります。

民法第210条 (公道に至るための他の土地の通行権)
  1. 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
  2. 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖がけがあって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。

その他に、第三者によって土地が不法占拠されていて、土地の使用収益権が妨害されている土地なども不承認となります。
承認の却下事由に「地上権や賃借権などの第三者の使用収益権が設定されている土地」がありましたが、こちらの不承認事由の場合は、使用収益権が当事者間の契約等によって正当に設定されている必要はなく、事実上、第三者によって現に使用収益権が妨害されている土地ということになります。

このように、国が当該土地を取得した後、その土地の管理・処分を行う際に、第三者との争訟が予想される土地については、承認されないことになります。

その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

以下のような土地が該当するとされています。

  • 土砂の崩壊、地割れ、陥没、水又は汚液の漏出その他の土地の状況に起因する災害が発生し、又は発生するおそれがある土地
  • 熊などの危険生物が周囲に生息する土地で、その土地や周辺の土地で生活する人の生命や身体、農産物や樹木に被害が生じたり、又は生じるおそれがある土地
  • 適切な造林・間伐・保育が実施されておらず、その土地の市町村森林整備計画に定められた基準等を満たしていないため、国が取得した後に整備が必要となる森林
  • 土地が国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき承認申請者の金銭債務を国が承継する土地

土地の国庫帰属が承認された後の負担金

土地の所有者は、土地を国庫に帰属させることにより、土地の管理に要する負担を免れることになるため、その後に国が負担することになる管理費用の一部を負担金として支払う必要があります。
土地所有権の国庫への帰属の承認を受けた者は、承認された土地につき、国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して算定した額の負担金を納付しなければなりません。

土地の利用状況負担金
宅地面積にかかわらず20万円 (注1)
田・畑面積にかかわらず20万円 (注2)
森林面積に応じて算定
その他(雑種地・原野等)面積にかかわらず20万円

(注1)都市計画法の市街化区域または用途地域が指定されている地域内の宅地については、面積に応じて算定する。

(注2)以下の田・畑については、面積に応じて算定する。

  • 都市計画法の市街化区域または用途地域が指定されている地域内の農地
  • 農業振興地域の整備に関する法律の農用地区域内の農地
  • 土地改良事業またはこれに準ずる事業であって帰属法施行規則第15条に規定する事業の施行区域内の農地

負担金の算定方法など詳細については、こちらをご確認ください。           

相続土地国庫帰属制度の利用を検討されている方へ

相続等で取得した土地の処分を考えていらっしゃる方は、おそらく以下の流れで検討されるかと思います。

  1. 通常の不動産売買の手続により売却する
  2. 現地の方と交渉して安く(あるいは無料で)引き取ってもらう
  3. 相続土地国庫帰属制度を利用する
  1. 普通に買い手がつく土地であれば、まずは通常の売却を検討されると思います。
    都会の宅地であれば、多少の問題がある土地であっても、そういう土地を専門に扱う業者もいますから、余程のことがない限り、通常は買い手はいると思います。
    売れる土地であれば、不動産仲介業者と媒介契約を締結して、不動産の買主を探してもらうことから始めます。

  2. 一般の市場では買い手が付きにくい土地、例えば、市街化調整区域内の田畑で農地法3条許可が必要な農地の場合、現地で現に農業を営んでいる人しか農地を取得できません。そのような場合は、現地の農家の方と直接交渉して安く買い取ってもらうか、場合によっては無料で引き取ってもうらことになるかと思います。自分の子供たちに田舎の土地問題を引き継がせたくないと考える親御さんのなかには、無料でも処分したいと考える方が一定数いらっしゃると思います。

    このような土地の場合、まず直面する問題として、土地の売却価格が安い又は無料のため、不動産仲介業者をあてにできないことです。不動産仲介業者の報酬は、不動産の売買代金の3~5%(%は売却の価格帯による)と決まっているため、売却価格が安すぎる場合は仲介業者が熱心に動いてくれない可能性が高いですし、ましてや無料の場合は仲介手数料が発生しないので依頼することができません。従って、ご自身で動くしかありません。

    対策方法は限られますが、まずは現地の知り合いの方やその地区を担当されている地区長の方などにお願いをして、引き取り手を探してもらうことから始めることになるかと思います。田畑や山林であれば、現地で農業を営んでいる方や現地に山林を所有されている方が引き取ってくれる可能性も意外とあります。譲受人が現地の方なので、譲渡する方も安心して引き渡すことができます。
    現地に知り合いがまったくいない場合には、処分する土地が田畑などの農地であれば、現地の農業委員会の方に事情を話して地区長を紹介してもらうのも一つです。地区長を紹介して貰えるようであれば、手土産を用意して実際にお会いしたうえで、引き取っていただける方を探してもらえるようお願いしてみるといいでしょう。

  3. これでも引き取り手が見つからない場合、相続土地国庫帰属制度の利用を検討することになるかと思います。
    相続土地国庫帰属制度の利用には費用(申請手数料14,000円、承認された後の負担金)がかかりますし、境界標識などの設置等が求められるなど、かなりハードルが高い印象です。

    土地の境界の判断はある程度専門的な知識がないとできませんし、この制度の利用を検討されている方の中には、現地から遠く離れたところに居住されている方も多くいらっしゃると思いますので、ご自身で手続きすることは難しいと思います。従いまして、実際の作業は現地の土地家屋調査士などの専門家に依頼することになると思いますが、当然それにも費用がかかります。

このように、相続土地国庫帰属制度は誰でも気軽に利用できる制度ではなく、利用するまでの準備がそれなりに必要になります。それでも固定資産税などの税金の納付、近隣の方に迷惑が掛からない程度に行う必要がある管理のための費用など、これらの問題をいつまでも引きずるわけにもいかず、自分の代で片づけて終わりにしたいと考えていらっしゃる方にとっては、申請を検討してみる価値はあるかと思います。