受託者は、信託の目的に従い、信託行為で定められた権限の範囲内で信託財産の管理等を行う義務があります。受託者が、その義務に違反して権限を逸脱した行為(権限外行為)を行った場合でも、原則としてその効果は信託財産に及ぶとされています。
その上で、以下の条件に該当する場合に限り、受益者はその行為を取り消すことができます。(信託法第27条)
受託者が信託財産に対して行った権限外行為については、次のいずれにも該当するときに限り、受益者は取消権を行使することができます。
- 権限外行為の相手方が、その当時、その行為の対象物が信託財産であることを知っていたこと。
- 権限外行為の相手方が、その当時、その行為が受託者の権限外行為であることを知っていたこと又は知らなかったことにつき重大な過失があったこと。
信託の登記・登録をすることができる信託財産に対して抵当権を設定したり、あるいは第三者に所有権を移転したりした行為が受託者の権限外行為だった場合、次のいずれにも該当するときに限り、受益者は取消権を行使することができます。(※この場合は信託財産であることが登記・登録により公示されていますので、取引の相手方の信託財産であることについての知・不知の事情は考慮されません)
- 権限外行為の当時、その行為の対象となる信託財産に信託の登記又は登録がされていたこと。
- 権限外行為の相手方が、その当時、その行為が受託者の権限外行為であることを知っていたこと又は知らなかったことにつき重大な過失があったこと。
一方で、取消権をいつまでも行使しないで放置しておくことは、信託財産に対する取引の安全性を妨げることになりますので、以下のいずれかに該当する場合には、取消権は時効によって消滅します。
- 受益者(信託管理人がいる場合は信託管理人)が取消しの原因があることを知った時から3か月間取消権を行使しないとき
- 受託者が権限外の行為を行った時から1年を経過したとき
民法の代理に関する規定では、代理人が行った権限外の行為の効果は、原則として本人には及びませんが、本人にも一定の帰責事由がある場合(表見代理)で、かつ、取引の相手方に過失等がない場合(代理権があると信ずべき正当な理由があるとき)に限り、取引の効果が本人に及ぶとされています。
つまり、原則的には本人に効果は及ばないが、例外的にその効果が及ぶ場合があるというのが代理に関する規定です。
一方、信託の規定はその逆で、原則的には受託者の権限外行為は信託財産に及ぶけれども、一定の条件に該当する場合に限り、受益者は、受託者が行った権限外行為を取り消すことができるということになります。
家族信託に関するご相談は、こちらからお気軽にご連絡ください。

