株式会社の設立登記の申請書に添付する「払込みがあったことを証する書面」とはどのようなものですか?

発起人による設立時発行株式の引受け及び出資の履行

発起人は、株式会社を設立する際に、設立時発行株式を1株以上引き受けなければならず、株式の引き受けを行っていない者は、会社の設立手続に貢献したとしても発起人ではありません(会社法第25条第2項)。

設立時発行株式の引き受けを行った発起人は、株式の引受け後遅滞なく、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又は出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければなりません(会社法第34条)。

そして、株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立し、発起人は、株式会社の成立の時に、出資の履行をした設立時発行株式の株主となります(会社法第49条、第50条第1項)。

「払込みがあったことを証する書面(商業登記法第47条第2項第5号)」とは、発起人が会社成立後の株主になるための上記手続のうち、会社法第34条に規定する出資の履行に関する証明書のことをいいます。

払込みがあったことを証する書面

「払込みがあったことを証する書面」には、次の2種類があります。

  1. 払込取扱機関である銀行等の金融機関が作成した払込金受入証明書
  2. 設立時代表取締役が作成した払込証明書に、払込取扱機関である金融機関の預金通帳の写し等を合綴したもの

上記のうち2の「設立時代表取締役が作成した払込証明書」は発行手数料もかかりませんし、作成に時間もかかりません。実務でも「設立時代表取締役が作成した払込証明書」を使用することが多いと思いますので、こちらについて説明いたします。

設立時代表取締役が作成した払込証明書

設立時代表取締役が作成した払込証明書は、以下の方法で作成します。

  1. 「払込みがあったことを証する書面」を設立時代表取締役が作成する。
  2. 預金通帳の写し等を上記1の書面に合綴する(ホッチキス等で綴じる)。

1、設立時代表取締役が作成する「払込みがあったことを証する書面」

設立時代表取締役が作成する「払込みがあったことを証する書面」については以下をご参照ください。

設立時代表取締役の押印は必要ありませんが、当事務所に手続をご依頼いただく場合には、設立時代表取締役が手続を行っていることの確認として、法務局への届出印を押印していただいています。

2、預金通帳の写し等

預金通帳の写し等については、以下の点について注意が必要になります。

  1. 払込取扱機関について
  2. 払込みを行う預金口座の名義人について
  3. 合綴する預金通帳の写し等について
  4. 払込みの金額、払込みの時期について
払込取扱機関について

払込取扱機関は、会社法第34条及び会社法施行規則第7条で定められている金融機関に限られます。

  1. 銀行1
  2. 信託会社
  3. 株式会社商工組合中央金庫
  4. 農業協同組合又は農業協同組合連合会(※農業協同組合法)
  5. 漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合又は水産加工業協同組合連合会(※水産業協同組合法)
  6. 信用協同組合又は協同組合連合会(※中小企業等協同組合法)
  7. 信用金庫又は信用金庫連合会
  8. 労働金庫又は労働金庫連合会
  9. 農林中央金庫

(注1)日本における銀行の海外支店、内閣総理大臣の免許を受けた外国銀行の日本支店も払込取扱機関として認められていますが、外国銀行の海外支店は払込取扱機関として認められていません。

払込みを行う預金口座の名義人について

払込みを行う預金口座は、原則として、発起人名義の口座になります。

例外として、以下の名義人の口座に払い込みを行うこともできますが、その場合は、「発起人から出資金の払込の受領権限を委任されたことが確認できる委任状」を登記申請書に添付する必要があります。発起人の委任状は、発起人が複数いる場合であっても、そのうちの1名からの委任状で問題ありません。

  • 設立時取締役の口座
  • 設立時代表取締役の口座
  • 発起人及び設立時取締役の全員が日本国内の非居住者であることが明らかである場合には、それらの者は払込取扱機関に口座を有していないと思われるため、発起人及び設立時取締役以外の第三者の口座
合綴する預金通帳の写し等について

預金通帳の写し等としては、①払込取扱機関(金融機関等)、②口座番号、③口座名義人の氏名又は名称、④払込みの日付、⑤払込みの金額 が確認できる以下のものが該当します。

  1. 預金通帳(表紙・口座の情報が記載された1ページ目・出資金の払込みが記帳されたページ)の写し
  2. 払込取扱機関の取引明細表
  3. 払込取扱機関の振込受付書
  4. インターネットバンキングで上記①~⑤が表示されたパソコン等の取引画面をプリントアウトしたもの(※口座名義人の氏名や口座番号などの情報が同一画面に表示されず、プリントアウトした書類の関連付けが確認できないような場合には、口座名義人の氏名と口座番号が記載されたキャッシュカードのコピーを併せて添付するなどの対応を行うことで認められる場合があります)

※上記書類が用意できない場合でも、他の書類で代替できる場合がありますので、詳細については管轄の法務局に確認されることをお勧めします。

払込みの金額、払込みの時期について
払込金額

複数回に分けて払込みがされていても、その合計金額が払込金額に達していれば払込みとしては有効です。複数回の払込みの間に口座からの出金があって、口座の残高が払込金額に一度も達していなくても問題ありません。

払込みは、口座振込(振込人の氏名等が通帳に記載される)でも、口座への入金(入金者の氏名等は通帳に記載されない)でも構いません。ただし、口座振込の場合、振込人の氏名や摘要から明らかに出資金の払込みとは無関係であることが確認できる入金については、当然ではありますが払込みとは認められません。

また、払込みがなされたことの確認(入金履歴)が必要になりますので、口座内に最初から払込金額分の預金残高があったというだけでは認められません。

払込みの時期

設立時発行株式に関する内容が確定することで払込み金額が決まりますので、設立時発行株式に関する事項が定められた定款の作成日または発起人全員の同意書の作成日以降、設立の登記を申請するまでの間に払込みをされるのが一般的だと思います。

一方で、設立までのスケジュールがタイトで、手続の前後に気を遣う余裕がないケースもあります。

令和4年の法務省民事局商事課長の通知で、払込みの時期については、定款の作成日または発起人全員の同意書の作成日の前であっても差し支えないとされましたので、発起人が会社を設立しようと決めた後、定款作成等の前後を問わないタイミングで払込みをすれば問題ないことになりました。

令和4年6月13日付法務省民商第286号

預金通帳の写し又は取引明細表その他払込取扱機関が作成した書面に記載された払込みの時期については、設立時発行株式に関する事項が定められている定款の作成日又は発起人全員の同意があったことを証する書面に記載されているその同意があった日後に払込みがあった場合はもとより、その前に払込みがあった場合であっても、発起人又は設立時取締役(発起人からの受領権限の委任がある場合に限る)の口座に払い込まれているなど当該設立に際して出資されたものと認められるものであれば、差し支えない。