商業登記の申請書に添付した書面の原本は還付請求することができますか?

原本の還付請求の可否について

結論から申し上げますと、商業登記の申請書に添付した書面については、すべての原本を還付することができます。

不動産登記の場合は、「所有権の登記名義人が登記義務者となる場合に添付する印鑑証明書」のように、原本還付が認められていない書面があります(不動案登記規則第55条第1項)が、商業登記の場合はそのような規定がないため、すべての添付書面について原本の還付請求ができます。

原本還付の方法

登記申請書の添付書類の原本還付の請求は、登記の申請書に、還付請求する書類の謄本(コピー)を添付し、当該謄本に「これは原本と相違がない」等の記載とともに、登記申請人(または申請代理人)の氏名・名称を記載して行います(商業登記規則第49条2項、4項)。謄本が複数ページある場合でも、「原本に相違ない」旨と登記申請人等の氏名・名称はすべてのページに記載する必要はなく、最初の1枚目に行えばそれで問題ありません。

以前は、氏名・名称に加えて、登記申請人等の「押印」及び謄本が複数ページにわたる場合は「契印」も必要でしたが、改正により現在では押印と契印は必要ありません。

不動産登記では「登記官は、原本還付の請求があった場合には、調査完了後、当該請求に係る書面の原本を還付しなければならない。(不動産登記規則第55条第3項)」と規定されているため、添付書面の原本が手元に戻ってくるのは、登記手続が完了した後になります。法務局内での登記処理に1か月ほど時間がかかるのであれば、1か月間は原本が手元にない状態になりますので、その間に原本を使用する必要があっても使えないということになります。
一方で、商業登記の場合は、商業登記規則第49条で不動産登記規則第55条のような規定はされていないため、登記申請時に還付してもらえるように手続を行えば、登記申請時に原本が手元に戻ってきます。

原本還付の注意点

以下に、商業登記の添付書面について原本還付を請求する場合の主な注意点を挙げておきます。

還付請求のタイミング

商業登記、不動産登記に共通することですが、原本還付の請求は、原則として登記の申請と同時にしなければなりません。

登記の申請を行い、添付書面の原本を法務局に提出してしまった後では、仮に原本還付を請求したくても、既に原本が手元にないため謄本を作成することができません。もしも、あらかじめ原本をコピーしていてそれが手元にあれば、登記申請後でも登記処理がされる前に法務局に申し出たうえで謄本を提出すれば、原本還付の対応をしてもらえる可能性はあります。

注意点として、謄本は原本との同一性が確認できることが必要となります。通常は原本を「コピー」して謄本を作成します。原本をいったんPDFファイルに変換した場合、PDFファイルに変換される時点で、若干ですが書面が縮小されてしまいます。従いまして、PDFファイルを印刷したものは謄本としては認められません。

特に印鑑の印影などは明らかに大きさが異なりますので、PDFファイルを印刷したものを謄本として提出しても登記の申請は補正(比較的軽微な不備について法務局から訂正を求められること)になりますので、注意が必要です。

原本の提出が必須であること

当然ですが、原本とその謄本を提出して原本還付の請求を行いますので、原本の提出は必須です。その上で、特に注意すべき点についてご説明いたします。

提出する原本について

例えば、株主総会議事録等が添付書面である場合に、当該議事録の謄本は、登記の申請に必要な部分のみコピーしたものを提出すれば差し支えないとされています。ただし、その場合であっても提出する株主総会議事録は原本そのものであることが必要です。

以前にある会社の方から、株主総会議事録を会社保存用と登記申請用と2部作成するので、登記申請用の方は議題や議案を抜粋したもので問題ないかと聞かれたことがありますが、これは認められないということになります。

社内の機密事項が外部に漏れることを防止したいという目的で、会社からそのような質問をされたのですが、法務局に提出する謄本は登記申請に必要な部分だけにするので、その他の会社の機密部分は法務局には保存されないことを説明してご納得いただきました。

押印の要否と原本との関係

令和2年7月17日の閣議決定に基づいて、商業・法人登記手続について押印規定の見直しがなされ、添付書面のうち一部について「会社・法人が法務局に届出している印鑑」の押印が不要とされました。

法務局への届出印の押印が不要な書類だからといって、すでに押印された書面の押印部分を無視して、押印済みの書類のコピーをそのまま原本として提出することはできません。提出するのであれば、以下のいずれかになります。

  • 押印済みの書面を原本として提出したうえで、同時に押印済みの書面の謄本を提出して原本の還付請求をする方法
  • 押印無しの書面を原本として提出したうえで、同時に押印無しの書面の謄本を提出して原本の還付請求をする方法(※法務局への届出印は押印されていないけれども、当該書面全体として見た場合に原本性があるため還付請求する必要がある場合)
  • 押印無しの書面について、還付請求せずに原本として提出する方法(※会社内部で特に保管しておく必要がない書面やデータで保管しておけば問題がない書面などの場合)

あくまでも、登記申請書の法定の添付書面原本でなければなりませんので、原本が存在することが確実視される押印済みの書類の謄本(コピー)を原本として提出することは認められませんので、ご注意ください。