株式会社の設立
株式会社を設立する方法として、発起人が全ての株式を引き受ける「発起設立」と、発起人以外からも株式の引受人を募集する「募集設立」の2つの方法があります。
会社設立時の段階で大規模な資本を必要としない中小規模の会社であれば、発起人の意思決定だけでスムーズに会社を設立することができる発起設立が適しており、実際の実務においても発起設立による方法がほとんどですので、株式会社の発起設立の定款作成についてご説明いたします。
発起設立による株式会社の設立の流れは以下のとおりですが、「発起設立による定款作成」は、まず最初に行うべき手続であり、かつ、会社経営の根幹となるルールを決める最も重要な手続になります。
- 発起設立による定款作成
- 公証人による定款の認証
- 出資の履行
- 設立時取締役等の役員の選任(機関の設置)
- 設立時取締役等による調査(必要な場合のみ)
- 設立の登記申請
定款に記載する事項
定款の記載事項には、次の3種類があります。
- 会社法上必ず記載する必要があり、記載しないと定款が無効になる事項(絶対的記載事項)
- 定款に定めなくても定款が無効になることはないが、定款に定めがなければその効力を生じない事項(相対的記載事項)
- 絶対的記載事項及び相対的記載事項以外の事項で、会社法その他の強行規定に違反しない範囲で、定款に記載することができる事項(任意的記載事項)
絶対的記載事項
定款に定めがなければ定款が無効になってしまうため、必ず定めなければならない事項です。
また、絶対的記載事項のうち登記されるもの(登記事項)は以下のとおりです。
目的
◆目的とは会社が行う事業内容のことです。原則として会社は定款で定めた目的以外の事業を行うことができません。
会社が成長することでいずれは目的の追加が必要になるかもしれませんが、目的追加の登記を申請する場合、登録免許税だけでも3万円が必要になります。
会社設立後すぐに目的を追加しなければならないような事態に陥らないよう、設立の段階でこれから行おうとしている事業内容を具体的にイメージして、目的の記載に漏れがないか慎重に検討されることをお勧めします。
◆古物商や運送業など許認可が必要な事業を行う場合には、許認可の要件に適した事業目的を記載しておく必要があります。
◆登記を申請した後、目的については「明確性」「適法性」「営利性」が登記官の審査対象になります。
会社法が施行されて以降は、目的の「具体性」については審査対象から外れました。そのため「商業」や「商取引」といった目的でも登記は可能ですが、株式会社の事業目的は、会社設立後の銀行口座開設の際に審査対象となりますので、あまりにも抽象的すぎる事業目的は避けた方がいいかもしれません。
「明確性」とは、目的に用いられる語句の意味が、一般の人にとっても理解可能であることです。国語辞典などの一般人が使用する辞書やインターネット検索などで当該語句の意味が表示されていれば問題ありません。
「適法性」とは、目的の内容が法令や公序良俗に反していないことです。例えば、事業目的を「訴訟行為を含む民事紛争の交渉代理」としても、弁護士法第72条に違反していることが明白ですので登記することはできません。
「営利性」とは、目的の事業内容によって株式会社が利益を得る可能性があることをいいます。株式会社は営利を目的とした民間の法人ですので、利益を得る可能性が全くない事業は目的として登記することができません。
商号
商号とは会社の名称のことです。
◆商号には、漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字(大文字及び小文字)、アラビア数字のほか、次の6種の符号を使用することができます。
【6種の符号】
「&」(アンパサンド)、「’」(アポストロフィー)、「,」(コンマ)、「-」(ハイフン)、「.」(ピリオド)、「・」(中点)
これら6種の符号は、字句を区切る際の符号(例:株式会社A&B)としてのみ使用できますので、商号の先頭や末尾で用いることはできません。ただし、「.」(ピリオド)については、省略を表すものとして、商号の末尾に用いることができます。
◆商号がローマ字表記の場合、単語の間を区切る場合に限って商号中に空白(スペース)を用いることができますが、それ以外は商号中のスペースの使用は認められません。ローマ字の場合は、スペースがなければ意味が分からなくなってしまうからです。
(〇)株式会社GREEN HOUSE
(×)株式会社ブルー オーシャン
◆株式会社を設立する場合は、商号の前でも後でも中間でも構いませんが、商号に必ず「株式会社」の文言を入れなければなりません。「株式会社」は漢字で表記する必要があり、ひらがな表記やカタカナ表記は認められません。
(例:株式会社ABC商事、ABC商事株式会社、ABC商事株式会社Japan)
◆会社の本店として予定していた場所にすでに同じ商号の会社が登記されている場合、「同一商号・同一本店」の設立登記は認められていません(商業登記法第27条)ので、商号を変えるか本店を別の場所に変更するしかありません。
特に、レンタルオフィスやバーチャルオフィスのように同じ住所を本店にしている会社が複数あるような場合、そこで会社設立を検討されている方は、登記情報サービスなどを利用して、同一商号の会社が登記されていないか事前に確認された方がいいでしょう。設立までの手続がほとんど終了した後で登記できないことが判明した場合には、それまでに費やした時間やお金がすべて無駄になってしまいます。
また、同じ住所に同一商号の会社がない場合であっても、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある商号を使用することはできませんので、ご注意ください。
【会社法】(会社と誤認させる名称等の使用の禁止)
第8条 不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。
【不正競争防止法】(損害賠償)
第4条 故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。
◆法令により名称使用が制限されている文言を商号に使用するここはできません。代表的なものとして「銀行」があります。銀行業の免許を受けていない一般の企業は銀行業を営むことはできませんので、そのような企業が商号の中に「銀行」という文言を入れて登記を申請することはできません。
◆その他公序良俗に反する商号は使用することはできません。また、商号のなかに会社の営業部門の一つと誤認される名称(例:「支店」「支社」「出張所」など)を入れて登記を申請することも認められていません。
本店の所在地
本店の所在地は、最小行政区画である市区町村までの記載で問題ありません。
(本店の所在地)
第3条 当会社は、本店を東京都中央区に置く。
定款の「本店の所在地」が最小行政区画までの記載であれば、同じ最小行政区画内の別の場所に本店を移転しても、定款の本店の所在地に変更はありません。
この場合、株主総会を開催して定款変更の決議をしなくても、取締役会の決議(取締役会非設置会社であれば取締役の決定)だけで本店を移転することができます。
次のように定款で具体的な「本店所在場所」まで定めている場合は、同じ最小行政区画内の移転であっても、定款変更が必要になるため、株主総会を開催して定款変更の決議をする必要があります。
(本店の所在地)
第3条 当会社は、本店を東京都中央区日本橋一丁目〇番〇号に置く。
定款で本店所在場所まで定めている会社も実際にはありますが、ほとんどの会社は最小行政区画である市区町村までの記載にされていると思います。
ただし、定款の記載が最小行政区画までであった場合でも、会社の本店の登記は地番まで記載された本店所在場所を登記する必要があります。
設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」を定款に定める場合の記載例になります。発起人が少人数で出資が確実に行われるような場合(例:発起人が自分1人の場合)は、記載例1で問題ありません。実務上も記載例1の方が一般的だと思います。
また、実際に出資された財産の価額のうち、資本金として計上された額(資本金の額)が登記事項になります。
記載例 1
(設立に際して出資される財産の価額)
第○条 当会社の設立に際して出資される財産の価額は、金○○万円とする。
2 当会社の成立後の資本金の額は、金○○万円とする。
設立に際して出資される財産の価額は、発起人が実際に払い込み等をした金額になります。
払い込み等がされた額の2分の1を超えない額については、資本金に計上しないで資本準備金として計上することができます(会社法第445条1項・2項・3項)ので、「設立に際して出資される財産の価額」と「資本金の額」は必ずしも同額とは限りません。
記載例 2
(設立に際して出資される財産の最低額)
第○条 当会社の設立に際して出資される財産の最低額は、金〇〇万円とし、出資された財産の価額の2分の1を資本金とし、その余を資本準備金とする。
このように「設立に際して出資される財産の最低額」を定めることも可能です。当初想定していた出資額のうち、実際には一部しか出資が履行されなかった場合でも、最低額の出資が履行されていれば会社を設立できるようにするための規定です。
発起人の氏名又は名称及び住所
発起人とは、会社の設立時発行株式を引き受けて、その対価として財産の出資または給付を行う者のことをいいます。
会社の設立を企画して設立手続を行ったとしても、設立時発行株式の引き受けを全く行わず、会社に対して財産の出資や給付の履行義務を負わない者は発起人ではありません。
株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立し、発起人は、株式会社の成立の時に、出資の履行に応じて設立時発行株式を取得して株主になります。
発起人の資格・年齢・人数・国籍等に関する制限は特にありません。法人であっても発起人になることができます。
定款には発起人全員の氏名又は名称及び住所を記載しなければなりません。

