指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社の設立の場合、通常の株式会社の設立とは異なる書面が必要になりますが、実務では、株主総会+取締役・代表取締役(+監査役・取締役会)の機関設計による中小規模の会社設立の案件が最も多いので、今回はこの機関設計の例でご説明します。
前半で「設立時取締役及び設立時監査役に関する書面」について、後半で「設立時代表取締役に関する書面」について解説します。
設立時取締役及び設立時監査役に関する書面
株式会社の設立登記の申請書には、設立時取締役及び設立時監査役について、次の書面を添付する必要があります。
設立時取締役及び設立時監査役を選任したことを証する書面
株式会社の設立時取締役及び設立時監査役は、以下のいずれかの方法で選任します。
設立登記の申請書には、設立時取締役及び設立時監査役を選任したことを証する書面(商業登記法第47条第2項第7号)を添付する必要があります。
- 定款(通常は定款の附則)に設立時取締役の氏名を直接記載する方法(会社法第38条第4項)
- 発起人の議決権の過半数をもって決定する方法(会社法第40条)
定款に設立時取締役の氏名を直接記載した場合
この場合の設立時取締役及び設立時監査役を選任したことを書する書面は定款になります。
定款は株式会社の設立登記の申請時に必ず添付しますので、この場合には、設立時取締役及び設立時監査役を選任したことを証する書面を別途用意する必要はありません。
発起人の議決権の過半数をもって決定した場合
この場合は、発起人の議決権の過半数の一致があったことを証する書面を添付します。
設立時取締役及び設立時監査役が就任を承諾したことを証する書面
株式会社と取締役等の役員との関係は、民法の「委任に関する規定」に従うとされています(会社法第330条)。
発起人によって選任されただけで被選任者が設立時取締役又は設立時監査役に就任することはありません。選任された者がその就任を承諾することで設立時取締役・設立時監査役となります。
従って、設立登記の申請書には、設立時取締役及び設立時監査役の就任承諾書(商業登記法第47条第2項第10号)を添付する必要があります。
設立時取締役及び設立時監査役の印鑑登録証明書又は本人確認証明書
設立する株式会社が取締役会非設置会社の場合と取締役会設置会社の場合で、設立時取締役の書面の内容が変わります。
設立する株式会社が取締役会非設置会社の場合
設立時取締役
この場合は、設立時取締役については、就任承諾書に個人の実印を押印し、当該印鑑について市区町村が作成した印鑑登録証明書を添付する必要があります(商業登記規則第61条第4項)。
設立時監査役
設立時監査役については、就任承諾書に記載した本人の住所・氏名と同一の住所・氏名が確認できる本人確認証明書を添付する必要があります(商業登記規則第61条第7項)。ただし、登記の申請書に当該取締役等の印鑑登録証明書を添付する場合は、本人確認証明書の添付は不要です(商業登記規則第61条第7項ただし書き)。
本人確認証明書の例としては、次のような書面が該当します。
設立する株式会社が取締役会設置会社の場合
この場合は、設立時取締役及び設立時監査役ともに、就任承諾書に記載した本人の住所・氏名と同一の住所・氏名が確認できる本人確認証明書を添付する必要があります(商業登記規則第61条第7項)。
本人確認証明書の例は上記のとおりです。
設立時代表取締役に関する書面
株式会社の設立登記の申請書には、設立時代表取締役について、次の書面を添付する必要があります。
設立時代表取締役を選定したことを証する書面
設立する株式会社が取締役会非設置会社の場合と取締役会設置会社の場合で、設立時代表取締役を選定したことを証する書面の内容が変わります。
設立する株式会社が取締役会非設置会社の場合
設立時代表取締役の選定方法は、以下のいずれかの方法になります。
- 発起人の互選による方法
- 定款(通常は定款の附則)に設立時代表取締役の住所・氏名を直接記載する方法
- 定款に設立時取締役の互選による旨の規定を設けた上で、設立時取締役の互選による方法(注1)
(注1)この場合、定款に「代表取締役は取締役の互選により定める」旨の規定があっても、その規定を3の互選規定とみなすことはできず、定款の附則に別途「設立時代表取締役は設立時取締役の互選により定める」旨の規定を設ける必要があります。
上記1から3の方法で設立時代表取締役を選定した場合、各選定方法による「設立時代表取締役を選定したことを証する書面」は次のとおりです。
- 1の場合 … 発起人の過半数の一致があったことを証する書面
- 2の場合 … 定款
- 3の場合 … 定款及び設立時取締役の過半数の一致があったことを証する書面
設立する株式会社が取締役会設置会社の場合
設立時代表取締役の選定方法は、以下のいずれかの方法になります。
- 設立時取締役の過半数の決定による方法(会社法第47条第1項)
- 定款(通常は定款の附則)に設立時代表取締役の住所・氏名を直接記載する方法
- 定款に発起人の互選による旨の規定を設けた上で、発起人の互選による方法
上記1から3の方法で設立時代表取締役を選定した場合、各選定方法による「設立時代表取締役を選定したことを証する書面」は次のとおりです。
- 1の場合 … 設立時取締役の過半数の一致があったことを証する書面
- 2の場合 … 定款
- 3の場合 … 定款及び発起人の過半数の一致があったことを証する書面
設立時代表取締役が就任を承諾したことを証する書面
代表取締役の就任承諾書に関しては、取締役と代表取締役の地位が「分化」しているか「一体化」しているかにより、その要否が分かれます。
設立時代表取締役の就任承諾書が必要となる取締役と代表取締役の地位が分化している場合とは、次の場合です。
この場合は、設立時取締役の就任承諾書のほかに、設立時代表取締役の就任承諾書が必要になります。
- 設立する株式会社が取締役会非設置会社の場合で、代表取締役を取締役の互選で定める旨の定款の定めがある場合(※前記の取締役会非設置会社における設立時代表取締役の選定方法3の場合)
- 設立する株式会社が取締役会設置会社の場合
設立時代表取締役の印鑑登録証明書
取締役会設置会社の設立時代表取締役については、就任承諾書に個人の実印を押印し、当該印鑑について市区町村が作成した印鑑登録証明書を添付する必要があります(商業登記規則第61条第4項、5項)。
尚、設立時代表取締役については、本人確認証明書の添付は不要です。

